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【メモ術】なぜ優秀な人ほどノートを「手書き」で取るのか?

「あなたは何のためにメモを取るのですか?」と聞かれたら、おそらく多くの方は「えっ、そんなの聞いたことを忘れないためでしょ」と答えるのではないでしょうか?

たしかに、"メモ"と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、授業ノートのような「事実の記録」のメモですよね。

でも実は、メモが得意とするのは、アイデアやひらめき、気付きを得る「クリエイティブな思考」のメモなのです。

メモは「第二の脳」である

メモは「第二の脳」とも言うべき、脳の外付けハードディスクです。

人間の脳は同時に処理できる情報量が限られているので、一度に多くのものを記憶しようとしても、すぐ脳の容量が覚えられなくなってしまうんですよね。

そこで「記憶をメモ(ハードディスク)に移して、空いた自分の脳の空き容量を創造力に使おうじゃないか」という話になるわけです。

  • 情報は、長期記憶に貯蔵される前に「作業記憶(ワーキングメモリ)」によって処理される
  • 作業記憶の容量には限界があり、およそ7±2の要素(=マジカル・ナンバー7プラスマイナス2)からなる

もちろん、第二の脳に蓄積された「事実の記録」が、第一の脳である自分自身の脳で新しいアイデアを生み出すこともあります。

そういった意味でも、気付いたことは何でもメモしておくという意識が重要なんですね。

著名人20人のノート

ブログ「The Art of Manliness」では、20人の著名男性のノートが画像つきで紹介1されており、マーク・トウェイン、チャールズ・ダーウィン、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベン、アーネスト・ヘミングウェイ、ベンジャミンフランクリン、アイザック・ニュートン、パブロ・ピカソ、トーマス・エジソン、レオナルド・ダ・ヴィンチらのノートの一部を覗くことができます。


パブロ・ピカソ - 「ゲルニカ」の準備スケッチ


トーマス・エジソン - 1871年8月31日、電信用自動翻訳印刷機のノートブックエントリ

ノートの形態や書き方にこそ違いはあるものの、偉大な思想家たちがアイデアをノートに走り書きする習慣を持っていたことは明らかだと言えるでしょう。

なぜメモは「手書き」で取るべきなのか?

「メモの習慣が大事なのは分かったけど、なんで『手書き』がいいの?」

名だたる著名人も、たまたまアナログなメモしかない時代に生まれただけであって、もし今の時代に生まれていたら「は? スマホ便利すぎて草www」となっていたかもしれません。

デジタルでのメモが可能になった今の時代に、わざわざアナログでメモを取るメリットはあるのでしょうか?

「書く」ことで記憶力や学習能力が高まる

脳には「脳幹網様体賦活系のうかんもうようたいふかつけい(RAS=Reticular Activating System)」と呼ばれる神経ネットワーク——脳幹から大脳全体に向かう神経の束——があります。

RASが刺激されると、以下のような働きが起きます。

  • 大脳皮質全体に「注意を促す信号」が送られ、対象物に対して集中力を高め、積極的に情報を収集し始める
  • 重要でない情報はスルーし、重要な情報を処理するために脳の働きをコントロールする「注意のフィルター」として機能する

そして、この——脳における重要な働きを持つ——RASを刺激するために最もかんたんな方法が「書く」ことなのです。

  • 「書く」ことで——その瞬間に積極的に注意を向けるべきものを作り出すことができる
  • 「書く」ことで——注意が集まり、脳が活性化することで、記憶力や学習能力が高まる

ペンはキーボードより強し

2014年にサイコロジカル・サイエンス誌に発表された「ペンはキーボードより強し」という興味深い論文2があります。

プリンストン大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の共同研究によるもので、327人の学生を対象に3つの実験が行われました。

「1つ目の実験」は、

  • TEDのスピーチを見せて、ノートを取らせる
  • 30分後、それに関するテストを実施

というシンプルなもの。

結果は——、

  • 事実を問う質問に関しては、パソコンを使った学生も手書きの学生も同じ点数だった。
  • コンセプトを問う質問に関しては、パソコン使用者のほうが点数が悪かった

『パソコンを使った学生は、キーとなるコンセプトをメモするのではなく、スピーチをそのまま書き取っていたから点数が悪かったのでは?』

と考えた研究者は、パソコン使用者に対して「自分の言葉でノートを取るように」と具体的な指示を出す「2つ目の実験」を行います。

しかし、1つ目の実験と同様、「手書きの学生のほうがメモの内容を思い出せた」という結果になりました。

『パソコンは手書きよりも完全な記録をつけられる(=実際の講義内容に近い形で勉強できる)』

ということに着目した研究者は、さらに「3つ目の実験」として、1週間後にテストを実施し、テスト前に勉強時間を与えました。

それでも、手書きの学生のほうが点数が高かったのです。

手書きメモのメリット

  • 成績がアップする
  • 長い期間にわたって記憶が定着する
  • 新しいアイデアを思いつきやすい傾向にある

手書きのメモが「傾聴→認知的処理→想起→記録」という一連の活動を行うのに対して、パソコンは「言葉をただロボットのように記録する」傾向にあります。

研究結果を見る限り、頭脳労働のあるなしによって記憶の定着やアイデアの発想に違いが出ている、と言っても過言ではないでしょう。

覚えるには手書きが一番

もうひとつ、2011年に行われたノルウェーのスタヴァンゲル大学とフランスのマルセイユ大学の共同研究3を紹介します。

この実験は、大人の被験者を「キーボードグループ」と「手書きグループ」に分けて「20文字のアルファベットの文字列」を記憶してもらい、3週間後と6週間後に、その文字列をどれだけ記憶しているかをテストするというものです。

結果として、タイピングよりも手書きのほうが記憶に残りやすいことが明らかになりました。

また、MRIを使って手書き中とタイピング中の脳の働きをスキャンしたところ、手書きのグループは「ブローカ野」と呼ばれる言語処理にかかわる部位が活性化していることも判明しています。

落書きは記憶力を高める

子供の頃に「ノートに落書きしちゃいけません!」って怒られた方も多いと思うんですが、実は落書きは記憶力を高めることも分かっています。

2009年、イギリスのプリマス大学の研究チームは、18〜55歳までの40人の被験者に対し、電話のメッセージを聞いて、後から名前や場所を思い出してもらう記憶実験4を行いました。

20人の被験者には2分半の電話のメッセージを聞き取りながら紙に描かれた図形を塗りつぶすように、もう半分の20人には特に指示を出しませんでした。また、どちらのグループにも「メッセージの内容は退屈なものだ」と事前に告知がされていました。

両グループに対して、電話中に話されたある名前8つと場所8つを書き出すように指示したところ、思い出せた名前と場所の数は——、

  • 落書きをしたグループ:平均7.5個
  • 落書きをしなかったグループ:平均5.8個

という結果になりました。

つまり、落書きをしたグループは、落書きをしなかったグループに比べて、29%も多くの名前と場所を思い出すことができた、というわけです。

リーダーである研究者のジャッキー・アンドレイド氏は、「退屈なとき、人は空想を始めやすいもの。空想は集中力を落とし、効率も落とす。しかし、単純作業である落書きは、空想を防止し、集中力を高める効果がある」と分析しています。

ちなみに、『人間失格』でも有名な太宰治の学生時代のノートには、たくさんの落書き(自画像)が描かれていた5そうですよ。


太宰治修身ノート(弘前大学附属図書館貴重資料)

ひらめきは30秒で消えてしまう

ひらめきとよく似た概念に、「わかったぞ」という体験を表す「アハ体験(a-ha! experience)」というものがあります。

脳科学者の茂木健一郎氏は、

人がアハ!体験をすると、0.1秒ほどの短い時間に、脳の神経細胞がいっせいに活動して、世界の見え方が変わってしまいます。神経細胞がつなぎかわって、「一発学習」が完了し、今までと違った自分になってしまうのです。

と述べています6

アイデアやひらめき、気付きは神経細胞の発火——花火のようなもの。

情報を使えば使うほど、脳内の神経回路は太く、丈夫なものになっていきます。

でも、新しい道路は——時間にしておよそ30秒〜1分程度で——すぐに消えてしまいます。起きたときに覚えていたはずの夢が、いつの間にかまったく思い出せなくなっていたのと同じですね。

これは記事冒頭で出てきたワーキングメモリー(作業記憶)の話ともつながってきます。

脳の作業記憶は限られているので、容量に対して情報量がオーバーしてしまうと、ボーッとしたり、判断が鈍ったり、ひとつのことを深く考えられなくなってしまうんですね。

「書く」ことで不安が解消される

シカゴ大学で行われた心理学者シアン・バイロック教授の実験を紹介します。

結果から言うと、この実験によって「試験前に不安を書き出すことで、問題を解くために使えるワーキングメモリーが増える」ことが判明しました。

大学生20人に数学のテストを2回受けてもらい、1回目は「ベストを尽くすように」と指示し、2回目は「成績優秀者には賞金が出るよ」「成績が悪いと連帯責任でチームの他のメンバーに迷惑をかけるよ」などとプレッシャーをかけました。

そして、2回目のテストの前には学生を以下の2つのグループに分けました。

  • 10分間、静かに座っていてもらうグループ
  • 10分間、試験に関する不安を書き出してもらうグループ

その結果——、

  • テスト直前に座っていただけのグループは、2回目のテストで1回目と比べて正答率が12%低下
  • 不安を書き出したグループは、2回目のテストのほうが1回目のテストより正答率が5%向上

となりました。

また、バイロック教授は別の実験で、「紙に書く行為に効果があるのではなく、試験に対する不安を書き出すことに効果がある」ということも証明しています。

これは、紙に書き出すことで心配事が外に吐き出され、その結果として、ワーキングメモリーがリセット——脳の空き容量が増える、という仕組みになっているんですね。

まとめ

  • 気付いたことは何でもメモしておく
  • 偉大な思想家たちはアイデアをノートに走り書きする習慣を持っていた
  • 「書く」ことで記憶力や学習能力が高まる
  • 手書きメモは、成績が上がり、長い期間にわたって記憶が定着し、新しいアイデアを思いつきやすい
  • 落書きは記憶力を高める
  • 「書く」ことで不安が解消される

本記事を作成するにあたって、多くの書籍を参考にしました。どれも読んでおいて損はない名著ばかりなので、気になるものがあったらチェックしてみてくださいね。

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