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【感想・レビュー】小説『空の青さを知る人よ』を読んで考える「空の青さ」とは

2019年10月10日

ついに映画『空の青さを知る人よ』が明日、2019年10月11日(金)より全国ロードショーですね。

公開前日ということで、さっそく小説版の『空の青さを知る人よ』で予習してきました。

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』に続く、超平和バスターズ原作アニメの小説版になります。

内容はザ・青春ドラマって感じなんですが、なんていうか「すっかり大人になっちゃった人たち」にとっても刺さる内容になってるんじゃないかな、って思います。

200ページちょっとなので、2時間もあればサクッと読めちゃいますよ。

小説『空の青さを知る人よ』の魅力やあらすじ、感想・レビュー、考察を「ネタバレあり」でまとめていきます。

まだ原作を読んでいない方、もしくは映画を未視聴の方はご注意ください。

『あらすじはいいから、感想・レビューを知りたい』という方は、小説『空の青さを知る人よ』の考察と感想・レビューを先にご覧ください。

小説『空の青さを知る人よ』のあらすじ・ストーリー

注意事項

ここからネタバレありのあらすじです。ご注意ください。

あおいの夢

主人公・相生あいおいあおいには、「東京に出てバンドで天下を取る」という夢があった。

埼玉県秩父市に住んでいるあおいは、自分の住む街を「巨大な牢獄」と形容し、どこか閉塞感を覚えているようだった。

幼い頃に両親を事故で亡くしてからは、姉のあかねが両親の代わりになり、すべてを背負った。

あおいは、あかねが大好きだからこそ、自分が東京を出て姉を責務から開放し、「自由にしてあげたい」と考えていた。

あおいの姉・あかねの昔の恋人、金室慎之介

あかねは高校時代の同級生であり、同じ市役所で働く、バツイチの中村正道から行為を寄せられていた。

しかし、あかねには忘れられない人がいた——。

その人物こそ、高校時代に付き合っていた金室慎之介だった。

金室慎之介は、高校時代に正道とともにバンドを組んでおり、今のあおいと同じように「バンドで成功する」という夢を持っていた。

慎之介は「高校卒業後にいっしょに東京に出よう」とあかねを誘ったものの、あかねはそれを断る。

『成功したら迎えに来る』と言い残し、慎之介は東京に旅立ってしまった——。

13年前の慎之介「しんの」

あおいは、そのときの慎之介たちの演奏がきっかけとなり、今でもベースを続けている。

いつものようにお堂の中でベースを練習していると、突然『うるせえっっ!!』という少年の怒鳴り声が響いた。

声がした方を振り向くと、そこにいたのは高校時代の姿をした、13年前の慎之介「しんの」だった。

しんのの左目の眼球の白い部分には、ぽつんと浮かぶ黒い点「目玉スター」があり、それこそが彼が"しんの"たる証拠だった。あおいも同じ特徴を持っていた。

あおいにも目玉スターがあったものの、しんのは成長したあおいに気づくことはなかった。

あおいは、目の前の現実が信じられずに、その場から逃げ出してしまう。

しんのはとっさにあおいの後を追いかけようとするが、彼はなぜかお堂から出ることはできなかった。

31歳の金室慎之介

正道は町おこしの一環で『音楽の都フェスティバル』を企画し、大物演歌歌手の新渡戸団吉を呼ぶことに成功する。

あおいとあかね、正道、そして正道の息子の正嗣の4人は、新渡戸団吉を迎えるために西武秩父駅に来ていた。

突如としてトラックの荷台から現れる団吉と、バックバンド。そこにはギターを弾く、東京に旅立ったはずの31歳の金室慎之介の姿があった。

あかねたちの過去

あおいは13年前の金室慎之介、しんののことを正道の息子である正嗣に相談する。

しんのがあかねに「東京にいっしょに行こう」と言ったとき、すでにあおいたちの両親は事故によって他界していた——。

あかねはあおいを守るためにしんのとの東京行きの約束を破った。この街にとどまることを決めた。

東京行きを断られたしんのは、そのままお堂で考え事をしていて気がついたら"今"になっていたという。

あおいと正嗣は、しんのを「生霊」と判断し、あかねに対する強い気持ちや未練が原因だと推測する。

しんのは、未来の自分である慎之介とあかねが結婚すればすべて解決すると信じ、あおいと正嗣もしんのに協力することになる。

時間は残酷だ。

慎之介は今でもあかねのことを想っていた。

想像していた形ではなかったものの、音楽を生業にして東京で生活している——。

でも、違う。

13年という月日があかねの気持ちの何かを決定的に変えてしまった。

夢を追いかけ続けた13年が、慎之介の何かを決定的に変えてしまった。

時間は残酷だ。

井の中の蛙大海を知らず されど空の青さを知る

しんのとあおいは、13年前の卒業アルバムを見ていた。

そこにはあかねの「好きな言葉」として、『井の中の蛙大海を知らず されど空の青さを知る』と書かれてあった。

あおいには、その言葉の真意がわからなかった。

あおい、バンドデビュー

そんなとき、新渡戸団吉のバックバンドのメンバーである、ベースとドラム担当の2人が鹿肉にあたってしまう。

その代わりとして、あおいがベース、正道がドラムを担当することになる。

しかし、慎之介は『ガキの遊びといっしょにされたくない』と言い放ち、あおいを突き放した。

しんのに惹かれていくあおい

慎之介を見返そうと、あおいはしんのといっしょに猛特訓を開始する。

その中で、あおいはだんだんとしんのに心を惹かれていっていた。

あかねと慎之介

ある日、あおいは音楽堂の裏手で『ガンダーラ』を歌う慎之介の姿を発見する。

そこに歌声を聞きつけたあかねが姿を表し、慎之介のソロデビューCDを買っていたことを告白する。

それから慎之介は、あかねに向けて作った『空の青さを知る人よ』を歌った。

2人は少しだけ、昔の時間を取り戻した。

慎之介は『今の仕事をやめて戻ってこようかな』とあかねにぽつりとつぶやいたものの、あかねは『諦めるのはまだ早い』と諭し、2人はそのまま別れる。

あかねは声を上げることもなく、泣いた。

あおいの告白

『あか姉って、あんな風に泣くんだ』

あおいは、あかねが泣いた姿をこれまで見たことがなかった。

あおいはしんのに『あたしはしんのが好き』と告白をする。

今のしんのも好き、でもあかねのことも好き、どうしたらいいかわからない、あおい。

あかねの幸せを願うのであれば、あおいとしんのがいっしょにいていいはずがない。

土砂崩れ

フェスティバル前日、新渡戸団吉が大事なペンダントをなくし、それがないと歌えないと騒ぎ始める。

トンネルで落としたのでは、と推測し、あかねがペンダントを探しに行くことになる。

しかし、その直後土砂崩れが起き、それからあかねと連絡が取れなくなる。

あおいは、お堂に向かって走り始めていた。

しんのと慎之介

その頃、慎之介は置きっぱなしにしていたギター「あかねスペシャル」を取りにお堂を訪れ、そこでしんのと出会う。

ちょうどそこにあおいが現れるものの、しんのと慎之介は口論を始める。

一向にあかねの元に向かおうとしない慎之介を横目に、しんのはお堂から出ようと足掻く。

しんのは無事にお堂から抜け出すことができ、あおいといっしょにあかねの元に空を飛んで向かう。

牢獄は、とても綺麗だった。

しんのとの約束より

倒れた大木がトンネルに続く道をさえぎっていた。

しんのは土砂の丈夫から忍び込み、あおいは後から走ってきた慎之介と合流する。

慎之介はあかねの名前を叫ぶ。あおいは不安で胸がいっぱいになる。

そのとき、しんのがあかねを抱えて青空に浮かんでいた。

あかねは慎之介を素通りし、真っ先にあおいに抱きついた。

『——そうだ、そうだった。あかねはいつも自分を一番に考えてくれるから、だから、慎之介と別れたんだ。大好きなしんのより、しんのとの約束より、あたしを選んでくれたんだ。その愛を、世界で一番、あたしがちゃんと受け止めなきゃいけなかったんだ。』

あおいは1人で帰ると言って、あかねは慎之介としんのを車に乗せて帰っていった。

空の青さとは——

車内で眠るしんのを横目に、あかねと慎之介は話し始める。

慎之介は『まだ夢も、あかねのことも諦めない』と言い、あかねが卒業アルバムに書いた「井の中の蛙大海を知らず されど青空を知る」という言葉について語り始めた。

慎之介がその言葉の真意を知ったのは上京後のことだった。

『井戸の中から出ることのない蛙は、外の世界を知らない。けれど、井戸の中から見上げた空の青さを、美しさを、愛しさをよーく知っている。』

それはあかねにとってのあおいであり、慎之介にとってのあかねだった。

あかねはそれから、「これからも慎之介といっしょにいたい」という意味の言葉をわざとわかりにくく言った。

慎之介はその言葉の真意を理解するのに少し時間がかかった。

気がつくと、うしろの席にいたはずのしんのが消えていた。

何に、なれるだろう

あおいは叫んで、何度もジャンプを繰り返した。しんののように空を飛ぼうとして。

無理矢理にでも進むことが、今自分にできる唯一のことだと想った。

あおいはしんのが消えてしまったことを唐突に理解する。

『この空の青さを知った自分は、何ができるだろう。何に、なれるだろう。』

エピローグ

フェスティバルから2年後の11月、あおいは上京してすぐに組んだバンド『ガンダーラ』の凱旋公演で、秩父市内のライブハウスを訪れていた。

客席にはつい先日結婚したばかりの慎之介とあかねの姿があった。

慎之介は東京で音楽を続けていて、あかねとは遠距離恋愛という形で新婚生活を送っている。

ベースを構えながら、あおいは思う。

どこまで走っても、結局、井戸から出られないのかもしれない、と。

そんな風に思ったときは、あかねの好きな言葉に倣って、空を見上げることにしている。

『空の青さを覚えている限り、どこまでも走っていける。』

小説『空の青さを知る人よ』の考察と感想・レビュー

もうちょっとスマートにあらすじをまとめるつもりだったんですが、意外とボリューム出ちゃいましたね。

さて、小説『空の青さを知る人よ』を読んでのファーストインプレッションですが——。

正直言って、ちょっと物足りないように思いました。

小説自体が短いというだけではなくて、こう、なんていうか、『もうちょっと欲しかったなあ』って感じですね。

たしかにお話としてはきれいにまとまってますし、時折前に進んでいるのかわからなくなる感覚や、現状に対する閉塞感のようなものはとても共感できます。

でも、あと少し、もうちょっと心に響く何かがほしかった、というのが一度小説を読んでの感想です。

「スルメ」のような魅力があるのかもしれない

あらすじを書く段階で、何度か小説を繰り返し読んでたんですが、その度に「新しい発見」があるんですよね。

もしかしたら『空の青さを知る人よ』の魅力は、何度も読み込むことによって染み出してくる作品なのかもしれません。

スッと心に入ってくる作品というよりかは、何度も読み込んで、何度も考えて、何度も自分と向き合ってこそ味わえる世界を持つ作品なのかも、と。

「空の青さ」とは?

作中では、あかねが卒業アルバムに書き残した「井の中の蛙大海を知らず されど青空を知る」という言葉がキーになってますよね。

作品のタイトルである『空の青さを知る人よ』も、この言葉が元になっているんだと思います。

『井戸の中の蛙は外のことを知らないけど、空の青さはよく知ってるよね』って意味合いで使われてます。

僕らは「井の中の蛙」なのかもしれない

もしかしたら、僕らは「井の中の蛙」なのかもしれません。

誰しも日常に対して不平や不満を持っていて、閉塞感を覚えているのかもしれないし、前に進めている実感がないのかもしれない。

ここはまだ井戸の中なのかもしれないし、広い世界に出たつもりになっているだけなのかもしれない。

それでも、『空の青さを知る人よ』は「空の青さを知っていれば大丈夫だよ」とやさしく言ってくれてるんですよね。

空の青さは愛や夢といった言葉で形容できないもの

「空の青さ」は、あかねにとってのあおいであって、慎之介にとってのあかねなんです。

それは単に、大切な人とか、夢だとか、愛だとか、そういった言葉では片付けられないものだと思ってて。

それはその時々によって変わる——というより、どんな場所でどんなことをしてたって、空の青さを知ろうとしないと空の青さはわからないよ、ってことなんだと思うんですよ。

なんていうのかな、どこにいようと、誰といようと、何をしてようと、とにかく「空の青さ」を覚えておく。

それは恋人なのかもしれないし、家族なのかもしれないし、夢なのかもしれないし、何気ない日常なのかもしれない。

「空の青さ」を知っている人は、強い。

「空の青さ」はネガティブな気持ちの対極にある何か

まあ、人生なんて大半はうまく行かないものじゃないですか?

人間誰しも、『前に進めているのかなあ』とか『あの頃はよかったなあ』とか思っちゃうじゃないですか、どうしたって。

きっと、「空の青さ」ってやつは、そういう感情の対極にあるものだと思うんですよ、きっとね。

辛くなったときとか、苦しくなったときとか、悔しくなったときとか、そういうときに「空の青さ」を思い出してみる。

『自分は井の中の蛙なのかもしれないけれど、だからこそ、空の青さを知っているんだ』と思い出してみる。

空の青さはすぐそこにある

わざわざ空を探す人がいないように、僕らにとっての「空の青さ」もすぐそこにあるんだと思うんです。

気づくか、気づかないかだけ。知ってるか、知らないかだけ。たった、それだけ。

——というのが、小説『空の青さを知る人よ』を読んでのざっくりとした感想と考察ですね。

きっと映画を観たらまた新しい感想が出てくると思うので、そこらへんは改めて記事にまとめるつもりです。

ネタバレ「あり」の映画『空青』の感想です。

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こっちはネタバレ「なし」で映画『空青』の感想と魅力を語ってますよ。

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