3連休だから怖い話します。本日お送りするのは「ニタニタ」というお話です。
ニタニタ
これは関西の某大学に通っている女子大生Eさんから聞いた話。
その大学にはいわゆるセミナーハウスなるものがあって、そこで合宿をしたり、セミナーを行っているらしいんだよね。宿泊施設付きの建物といえばわかりやすいのかな。
別に古い建物というわけではなく、廊下もフローリングで、宿舎というよりかはどことなく「病院」みたいな雰囲気があったらしい。
Eさんもそこで部活の合宿を行ったことがあるらしいんだけど、大学1年生の夏休みに ちょっとした事件 があったんだって。
初めてセミナーハウスに入って思ったことは、まず「建物の造りがおかしい」ってことだったらしい。
宿泊棟から広間に移動するために、わざわざ階段を使う必要があるんだって。同じ建物内で、同じ階なのに。
大浴場も広間を経由する必要があって、出入り口は宿泊棟にあるだけ。
つまり、同じ建物なのに中は一方通行の”3構造"になっているってことらしいんだよね。
<出入り口 - 宿泊棟(2階建て) - 広間(1階建て) - 大浴場(1階建て)>
広間にも大浴場にも入口を作って外から回り込める造りにすればいいのに、わざわざ宿泊棟を経由して行く方法しかない。これが、まずおかしいと。
中でも、一番面倒だったのがお風呂に入るときだったらしい。大浴場に行くためには、いちいち階段を上って、
広間を通らなきゃいけない。こればっかりは新入生のみならず、先輩たちも文句を言っていたのだとか。
その大浴場の造りもちょっと変わってるらしく、10平方メートルほどの空間の真ん中に、3メートルほどの丸い浴槽がどーんと構えてあるんだって。
で、それを取り囲むようにして洗い場があると。彼女曰く、どことなく儀式を彷彿とさせるような造りだったって言ってた。
ここまではいいとしても、もう一つおかしいのが「鏡の位置」らしい。通常、それぞれの洗い場の前に鏡が設置されていると思うんだけど、
それがそうじゃないんだって。2つの洗い場の間に鏡が置かれていて、それも不便だって言ってた。変なところでコスト削減するなよ、って。
宿泊棟や広間の壁にもちょくちょく鏡が設置してあって、それも不気味に思えてならなかったらしい。
そのとき宿泊していたのは10数人で、彼女は6人部屋に泊まっていたらしいんだよね。
その日も大浴場に数人で行っていたらしいんだけど、お風呂上がりにそのうちの一人がトイレに行きたくなっちゃったんだって。
で、これがまた変なところで。トイレに行くのにも、わざわざ大浴場から一度サンダルで外に出て、細い通路を経由して行かなくちゃいけないんだとか。
建物は新しいのに、なぜかトイレだけは古いんだってさ。
だから、その子もできればそこのトイレには行きたくなかったみたいなんだけど、どうしても我慢できなかったらしいのね。
それでもそこへ行くのには怖かったらしく、その子は別の友達を連れて2人でトイレへ向かったんだと。
数分後に2人は無事に戻ってきたんだけど、さっき「トイレに行きたい」って言った子の様子がおかしくなっちゃったみたいでさ。
放心状態というか、ニタニタ、ヘラヘラしてる感じだったらしい。話しかけてもまともな返事が返ってこなかったんだって。
それからすぐに「とりあえず今日は早く休もう」ということになって、Eさんたちは足早に宿泊棟に戻ったらしい。
様子がおかしくなってしまった子は友達の肩を借りないとまっすぐ歩けない状態だったって言ってた。
宿泊棟に戻るまでも、通路にある鏡の前に立っては、ニタニタ、ヘラヘラ、していたらしい。
部屋に戻ると、その子の様子が急変して、急に壁をドンドン蹴り始めたらしいんだよ。突然の出来事にみんなパニックになっちゃって、中には泣き出す子もいたんだとか。
Eさんは無我夢中でそれを止めようとしたらしいんだけど、その子のあまりの力にぜんぜんダメだったみたい。小柄な子なのに。あとから駆けつけてきた先生と数人がかりでその場はなんとか落ち着いたみたい。
その子はそのあとすぐにベッドで寝ちゃったらしい。
やっとみんなが寝静まり、Eさんもうとうとしていると、さっき様子のおかしかった子の寝言が聞こえてきたんだって。
『ねぇ、赤ちゃんどこ?』
『うっ、うっ(突然泣き出す)』
『コココココココ』
Eさんはその子の上のベッドだったから、余計にその子の寝言が聞こえちゃったみたい。
それで目が冴えちゃって、気分転換にシャワーを浴びようと思ったんだってさ。そのままベッドにいるのも怖かったみたいで。
部屋には簡素な備え付けのシャワーがあって、決して良い性能のものではなかったらしいのだけれど、
それでも『ここにいるよりはマシ』って思って、薄暗い部屋の中を移動しながらシャワー室に向かったんだって。
そしたら急にシャワーの音が聞こえてきて、Eさん、不思議に思ったらしいんだよね。電気は消えてるし、誰か先に入ったのかなって。
『次入ってもいい?』
そう聞いた瞬間、突然シャワーが止まったんだと。ちょっと待っても返事はなし。物音もしない。
Eさんは怖くなってしまったらしく、そのまま自分のベッドに引き返そうとしたんだけど、
ここであることに気がついちゃったみたいなんだよね。
「みんな、ベッドで寝てるじゃん。ちゃんと6人いるじゃん」って。
飛び込むように自分のベッドに潜り込んで、それからしばらくガタガタ震えてたらしい。
恐怖で寝れないと思っていたみたいなんだけど、不思議とすぐに寝落ちしてしまったんだって。
どれぐらい寝ていたかはわからないけど、誰かに肩をトントンと叩かれて起こされたらしい。
『次、いいよ』
その声にEさんは寝ぼけ眼で返事をしたらしいのだが、
『いま耳元で囁かれたけど、ここ2段ベッドの上だよ?』
Eさんは、そのまま朝まで布団の中で震えながら過ごしていたらしい。
あんなに夜が長いと思ったのは人生で初めてだったって言ってた。
朝になると様子のおかしかった子はすっかり元通りになっていて、昨日のことはまったく覚えていないらしかった。
「7人目は誰だったんだろうね〜(ニタニタ、ヘラヘラ」
したり顔で話すEさんを横目に見ながら、
僕は『コイツ、憑かれてるんじゃないのか』と本気で思った。
さいごに
ここまで「3連休だから怖い話する〜ニタニタ〜」をお読みいただきありがとうございまーす。
今回のお話は、実際に聞いた体験談を組み合わせた「創作」です。どうかご安心を。
どこまでが真実なのかはご想像にお任せしますね。3連休、どうぞご安全にお過ごしください〜
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