テクノロジーにおいて「希望」と「脅威」は、決して対極にある概念ではなくて、むしろ密接している概念と言えるのかもしれません。
「コインの裏表」のようなイメージでしょうかね。裏も表も「同じコイン」なのに、裏と表で「コインの持つ機能」が正反対——みたいな。
あらゆる道具やテクノロジーは、あくまで「ある機能を持っている」というだけであって、実はその物自体に「目的はない」んですよね。
メスは、医者が使えば患者の命を救う道具になりますが、狂人が持てばそれは凶器となって、人を傷つけるための道具になってしまいます。
どんなに高機能で便利なものを使うにしても、それが道具である以上、「目的」を決めるのはいつだって人間側でなければならないし、決して「機能」に支配されてはいけないんです。
機能が優れたものであればあるほど、人間はその機能に飲み込まれやすい。
最新テクノロジーが持つ優れた機能に「脳」を乗っ取られないために、2020年のうちに「3つの習慣」を身につけておきませんか?
2020年に習慣化しておきたい3つのこと
3つの習慣
- デジタル・デトックス
- 瞑想
- 読書
はい、この3つだけです。実にシンプルですね。
デジタル・デトックス
デジタル・デトックスとは、SNSやスマホなどのデジタル機器の使用を自発的に控えること、あるいはその期間のことです。
現代の「デジタル社会」を檻と捉えるなら、デジタル・デトックスは「仮出所」と言ったところでしょうか。
こういう例えをしたのも、現代社会はある意味では檻のようなものかもしれない、と僕が考えているからです。
マルチタスクの危険性
デジタル・デトックスをおすすめする理由としては、まず「スマホの問題」がありますね。
スマホはその性質上、どうしても「マルチタスク(=一度に複数の作業をこなすこと)」気味になってしまうんですが、これがいけない。
例えば、睡眠不足は酔っ払っているのと同じくらい生産性が下がる1という有名な研究があります。
徹夜あるいは24時間睡眠を取らない状況の場合、パフォーマンスは血中アルコール濃度0.10%と同じ状態になる(俗に言う「ほろ酔い状態」が血中アルコール濃度0.05%)のです。
中でも特に注目すべきは、睡眠不足によってパフォーマンスが下がっているために、自分ではパフォーマンスが下がっていることを認識できないという点なんですよね。
これと同じ現象が起きてしまっているのが、何を隠そう「マルチタスク」なわけです。
マルチタスクの弊害2としては——、
- 作業ミスが50%増える
- タバコや大麻が脳に与える効果の3倍以上
- シングルタスクに比べ作業時間が50%長くなる
- 極端なマルチタスクは15ポイントもIQを下げる
- マルチタスクで作業をするとあらゆる面での生産性が40%落ちる
- 現代人がひとつのタスクに集中して取り書かれる時間は平均で1分15秒
- 一般的なスマホユーザーは1日のうちに平均して150回スマホをみている
- いったん作業が中断すると、再びその作業に取り掛かるまでに平均で25分かかる
などが挙げられます。
つまり、マルチタスクによってパフォーマンスが下がり、自分ではパフォーマンスが下がっていることに気づけないということです。
マルチタスクの依存性
さらに怖いのが、マルチタスクには依存性がある、ってことなんですよね。
- マルチタスクにより、ストレスホルモン(コルチゾール)が放出される
- 脳のギアを切り替え続けることでさらにストレスが増加、精神的に疲れ切った状態になる
- コルチゾールには、脳に刺激を与えて思考を妨害する作用がある
- 脳がマルチタスクによる刺激を求めるようになる
- 神経系の中毒に陥り、マルチタスク依存になってしまう
まさに負の連鎖。これは気をつけないと、そもそも負の連鎖に入っているということさえ認識できなくなっちゃうかもしれませんよ。
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マルチタスクは脳に悪い|やめれば仕事の生産性が40%アップする
SNSの危険性
オーストラリアのインスブルック大学によると、Faccebookに費やす時間が多い人ほど気分が落ちやすかった3という研究結果が報告されています。
スマホによるマルチタスクは、脳のパフォーマンスを低下させるだけでなく、心にも悪影響が出てしまうんですね。
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デジタル・デトックスのススメ
スマホはとても便利なデジタル機器ですが、それが優れた機能を持つものだけに、脳が危険に晒されている危険性も忘れてはいけません。
自分ではスマホを使いすぎているという事実さえ気づけなくなっている可能性もゼロではないので、数字やグラフでスマホの使用時間を把握できる機能やアプリを活用したりして、少しずつデジタル・デトックスの習慣を身につけていきましょう。
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これから紹介する2つの習慣も、デジタル・デトックスにとても役立つものなので、ぜひ参考にしてみてください。
瞑想
瞑想には大きく3つのメリットが挙げられます。
瞑想の3つのメリット
- ストレス耐性の獲得
- マイナス思考の抑制
- 脳疲労の意識的減少
瞑想によって脳が物理的に変化する
人間はストレスを感じるとアドレナリンやコルチゾールを分泌し、警戒体勢に入ります。
これらの働きによって動悸が早くなったり、血圧が上昇したりして一時的にパフォーマンスを上げているんですが、この状態が長く続くと「不眠症」や「自律神経失調症」などの悪影響が出てきてしまうんですね。
そこで瞑想の出番というわけです。
ハーバード大学の研究によると、8週間の瞑想で脳の灰白質(かいはくしつ)が再構築されることがわかっています。
具体的に言うと、前頭葉(海馬および小脳・脳幹)の灰白質密度が高まってることが判明しました。
灰白質はざっくり説明すると神経細胞が集まってる部分のことで、海馬は記憶や自己意識、考察などの活動に関係している脳の部位とされています。
なんと驚くべきことに、瞑想によって脳が物理的に変化することが明らかになっているんですね。
さらに、瞑想のトータル時間よって得られる効果も報告されています。
- 合計3時間@集中力が増したと感じる
- 合計11時間@前頭葉の神経伝達がよくなる=自制心アップ
- 合計28時間(=平均27分/日を8週間)@前頭葉が肥大化=自制心&決断力アップ
瞑想を続けることで、脳の働きが良くなり、ストレスによる悪影響を防いだり、ポジティブ思考にしてくれるというわけです。
『瞑想? なんだか難しそうだなあ』と感じてしまう方もいるとは思いますが、呼吸に意識を向けるだけで十分です。
僕の場合、あぐらをかいて背筋を伸ばし、軽く目を瞑り、息を4秒かけて吸い、7秒止めて、8秒かけて息を吐ききる『4-7-8』のサイクルを繰り返してます。
要は、瞑想はひたすら呼吸に意識を戻す練習のことという解釈で大丈夫ですよ。
DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)の重要性
最新の脳科学研究によると、何もしない時間——いわゆる「ぼーっとしている」「ぼんやりしている」状態のとき、脳内では「DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)」が活発に稼働していることがわかりました。
いわば脳のスタンバイ状態、過去の経験や記憶を整理・統合したり、現在の状況の分析・把握といった、これからの準備をしているわけですね。
ワシントン大学の研究によると、通常の脳の活動時に比べて、デフォルト・モード・ネットワーク稼働時では15倍ものエネルギーを消化していることが判明しています。
脳の消費エネルギーの60-80%をデフォルト・モード・ネットワークで消費しているわけです。
でも、これは決して悪いことではなく、むしろ脳は活動しているときよりも、実は「ぼーっとしている状態」のほうが重要である、とも言い換えることができます。
実際、デフォルト・モード・ネットワークの稼働時間が少ないと、前頭前野の機能が低下し、注意力、思考力、集中力などが総じて下がってしまうんですよね。
瞑想とDMN
ここまででDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)の重要性については理解していただけたかと思うんですが、本題は「瞑想」のことでしたよね。
なんと、瞑想を行うことでDMNで消費されるエネルギーを節約できちゃうんですよ。
DMNは脳の働きを維持するためにも必要なことですが、何分、余計なことまであれこれ考えちゃうので大量のエネルギーを必要とするんですね。
瞑想によってDMNの活動を抑えることで、本来DMNに使われるはずであったエネルギーを別のことに使える——。
瞑想はストレスによる悪影響を防ぐだけでなく、脳疲労も防げるのです。
読書
デジタル・デトックスの習慣で時間に余裕ができ、ストレスが軽減、気分も前向きになる。
さらに、瞑想を行うことで、ストレスによる悪影響が防げて、脳の疲労も防げる。
脳の機能が万全で、なおかつSNSやスマホに費やしていた時間が、いきなりフリータイムになってしまった!
——ともなれば、次にやるべきことと言えば、やっぱり「読書」ですね。
前半部分で「マルチタスクはいけないよ!」って話をしたんですが、現代社会で完全にマルチタスクを制限することはほぼ不可能です。
マルチタスクというのは、つまり、意識があちこちに分散して目の前のことに集中できなくなっている状態です。
マルチタスクによる弊害を防ぐためには、ひとつのことに集中する時間を意識的に持つことが重要なんですね。
そこで瞑想や読書といった習慣が非常に大事になってくるわけです。
集中力もついて知識も増える
読書を習慣化できるといいですよ。ストレスの解消方法としても有効ですし、集中力もつく。おまけに語彙や知識も増えますし、一石二鳥どころの話ではありませんよね。
ただ、読書と言っても、
『積読しちゃうんだよなあ』
『電子書籍と紙の本どっちがいいの?』
『どうしても本を買うお金を渋ってしまう』
だとか言う悩みが付き物です。
それぞれ、悩みに対する回答を別記事でまとめてますので、ぜひ参考にしてみてください。
オーディオブックで「聴読」するのも手
僕の場合、どうしても読書に気が向かない時は、オーディオブックで聴読するようにしてます。
オーディオブックは目や手が完全に自由な状態で読書できるので、スキマ時間での勉強や時間の有効利用にももってこいなんですよね。
AmazonのAudibleでは30日間の無料体験もできますし、トライアル中に解約すれば料金は一切かかりません。
僕は、Audibleを無料体験してからサービスを解約して、すぐさまaudiobook.jpに乗り換えました。こっちのほうが本の種類も豊富ですし、使い勝手がいいんですよね。
『読書苦手なんだよなあ』って方は、いっそのこと発想を転換させて「耳で読む読書」を試してみてはいかがでしょう?
まとめ
テクノロジーは生活を便利にするもの。でも、その一方で脳を危険に晒しているとも言える。
きっとこれから先の未来は、さらにテクノロジーの急速な発展が起きるでしょう。
そうなったときに『あっ、もう手遅れじゃん』とならないためにも、今のうちから良い習慣を身につけておきたいものですね。
習慣化のコツは、脳科学から学ぶ「習慣化するコツ」を超わかりやすく解説で詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
2020年に流行る5つのテクノロジーから「最新技術の危険性」について考えるという記事もまとめていますので、興味のある方はチェックしてみてくださいね。
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