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【脳から紐解く直感力】勘が鋭い、はスピリチュアルと言い切れるか?

「あの人って勘が鋭いよね」

「女の人の直感はよく当たるって言うよね」

日常で何気なく使っている「勘」や「直感」といった概念は、果たして本当にスピリチュアルの類だと言い切れるでしょうか?

それとも、努力次第で鍛えられるような——人間が本来持っている能力なのでしょうか?

現代の科学を持ってしても未知の部分が多い、人間の脳。

ひょっとすると、脳が瞬時に高度な計算によって導き出された答え——それが「第六感」と呼ばれるものなのかもしれません。

スピリチュアルという言葉の定義について

スピリチュアルという言葉は、もともとラテン語のspiritusに由来するキリスト教用語で、「霊的であること」を意味します。

ただ、現代においては、オカルトや宗教、不思議な現象などを意味する多義的な言葉でもあるので、ここでは便宜上「超自然的現象または存在」と定義させていただきます。

勘や直感はスピリチュアルと言い切れるか?

結論から言えば、勘が鋭い、直感が当たるといった概念は、「脳が"無意識的に"高度な処理を経て瞬時に導き出した結論」だと僕は考えています。

もちろんすべてがそうであるとは言いませんが、脳——無意識——が予想を遥かに超える力を持っていることも、また事実なのです。

意識は40ビット、無意識は1100「万」ビット

人間の脳は、意識しているときよりも、無意識のときのほうが大量のデータを処理しています。

意識しているときは、40ビットほどのデータしか同時に処理できません。研究によって振り幅はあるものの、100ビットを超えることはありません。

ニンテンドー64のCPUが64ビット、PS2が128ビットなので、「64ロクヨンを超えることはあっても、PS2を超えることはない」ということです。

一方、無意識下では、およそ1,100万ビットの情報を処理しています。1,100「万」ビットです。桁が違いますよね。

無意識にチェスをプレイすることは可能か?

チェスのグランドマスターは、反射的に盤面の分析できることが明らかになっており、盤面を一目見れば、自動的にそれらを意味のあるいくつかの構成要素に分けて解析——駒の配置を評価し、詳細を記憶しておける1のです。

また、最近の研究によると、この要素分析はまったく無意識のうちに処理されることが分かっています。

単純化した盤面を20ミリ秒間フラッシュし、直前と直後をマスク(意識的視覚を妨げる類似の画像)で挟んで不可視(意識では見えていないこと)にしたとしても、グランドマスターの判断に影響を及ぼします2

この実験結果は熟練したチェスプレイヤーのみ、また王手がかかっているかの判断などの有意味の問題のみに限ったものですが、直感の力を知る上では、興味深い研究結果と言えるでしょう。

ギャンブルから見る直感力

アイオワ大学のアントワン・ベチャラ教授によって行われた、確率や数的な予想に関する「数学的直感」の調査実験を見てみましょう。

初めに、被験者には4つの山札と2,000ドル(模造の紙幣)が与えられます。

カードをめくると、被験者に有利、または不利な指示——「100ドルの獲得」「100ドルの支払い」など——が書かれています。

被験者は最終的に利益が最大になるように、カードを引く山札を選択しなければなりません。

被験者には知らされていませんが、この山札のうち2つは、最初のうちは大きな利益が得られるものの、やがて支払いが増え始め、最終的には多大な損失が出るように仕組まれています。

残りの2つの山札は、適度の利益と支払いが交互するものの、着実に利益を積み上げられるようになっています。

最初のうちは4つの山札の中から無作為にカードを引いていきますが、だんだんと意識的な勘を働かせ始めて、最終的にどの山が優良か、不良かを報告できるようになります。

ベチャラ教授が注目したのは、「勘に先立つ期間」でした。

被験者は4つの山札に関してすでに多くの証拠を持っているのにも関わらず、依然として無作為にすべての山札からカードを引き、「どの山から引くべきか、何の手がかりも持っていない」と言い張ります。

——が、不良な山札から引く直前には、被験者の手は汗ばみ、脳がすでにリスクの高い山札を検知したことが分かりました。

つまり、ある種の「虫の知らせ」を無意識下で生んでいることが示されたのです。

なぜ無意識で察知していたリスクを見逃してしまったのか?

無意識にリスクの高い山札を察知していたにも関わらず、それを意識できなかったのはなぜでしょうか?

フランスの認知神経科学者スタニスラス・ドゥアンヌは『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』にて、「無意識のプロセスは、多数の項目に価値を割り当て、それらを平均したうえで結論を出すことに長けている。」と述べています3

しかしその一方で、「ベチャラ教授の実験のような——それぞれの山札から引くことによって利益と損失を慎重に評価しなければならない決定は、ワーキングメモリに重い負担をかける」ともしています。

つまり、通常はひとつや少数の可能性に絞るはずの意識がワーキングメモリに負担がかかったことで圧倒されてしまった、ということです。

直感はあくまで無意識的に行われるからこそ、直感と呼ばれるのかも知れませんね。

直感力の鍛え方

僕は、直感力を鍛えることは誰でも可能だと考えています。

勘や直感と呼ばれるものは、言うなれば「無意識まで刷り込まれた意識的かつ論理的な思考、または行動が統合されたもの」なのではないでしょうか?

これまでの記憶や経験則から脳が統計学的に導き出した結論のようなもの——として考えると、決してスピリチュアルなものとは言い切れないはずです。

将棋棋士である羽生善治氏は「直感」に関してこう語っています4

自然と湧き上がり、一瞬にして回路をつなげてしまうものを直感という。さらに、確信に結びつけることで、直感は初めて有効なものとなる。(中略)

ロジックを積み重ねる地道な訓練を繰り返すうちに、直感的に試合の流れや勝敗の分岐点となる勝負どころ、最終的に辿り着くであろう局面が正確に読めるようになる。

直感を鍛える上で必須の要素

どういった分野、もしくは場面で「直感」を発揮するかにもよるとは思いますが、直感を鍛える上で以下の2つの要素は必須かと思われます。

  • ロジックの積み重ね(=論理的思考の集積)
  • 無意識下での行動、思考の統合

ただ、後者の「無意識下での行動、思考の統合」は、もちろん意識的にできるものではありませんよね。

あくまで無意識は意識しないから無意識なのであって、意識して無意識を認識しようとしても、それは無理な話というもの。

鏡で自分の目の動きを確かめてみろ、と言うようなものです。終始動いている目を確認しようとしても、そのときには目はどうしても静止してしまいますから。

とは言え、自分で思考し、論理的思考を積み上げることで、ある種の虫の知らせのような「直感」を身につけることは十分に可能だと言えます。

そう考えると、日常生活においても「直感の質」を上げる手助けはできるのではないでしょうか?

わずかな変化を感じ取れるように規則正しい生活を送り、総合的に正しい判断が下せるようにしっかりと睡眠をとり、論理的思考を養うために本を読み、情報過多にならないようデジタル機器の使用を控える——。

何も別に禅僧のような生活を送る必要はまったくなくて、もっとこう——本当に「基本的なところ」なんでしょうね、きっと。

まとめ

現代における脳に関しての研究は、fMRI(磁気共鳴機能画像法)の普及のおかげでどんどん進んでいます。

特に「意識」や「無意識」と呼ばれる概念——勘や直感はもちろん、心の成り立ちといった心理学の分野にもこれからもっと多くの発見がされていくことでしょう。いやあ、楽しみですね。

こういった脳の働きや思考のプロセス、心の動きなどを勉強してみると、もしかしたら「直感」を鍛えるもっと効率的な方法が見つかるかもしれません。

もしそういう分野に興味があれば、スタニスラス・ドゥアンヌの『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』という本がおすすめです。

僕も今ちょっとずつ読み進めているんですが、脳の働き——主に意識について、最近の研究結果を取り上げつつ、実例つきで丁寧に解説した内容になっています。

まだ途中、というか3分の1も読めていないんですけど、すでに目から何枚のウロコが落ちたか分かりません。

——まあ、専門用語多め、かつ定価が2,700円と、少々手の出しづらい本なので、あくまで「私たちの思考、感情、夢はどこからやって来るのか?」という問いの答えを知りたい方へのおすすめ、ということで。

別記事では、目の錯覚(錯視)が生じる理由を脳科学の視点から考えています。おもしろい世界が見られると思うので、ぜひ興味がある方は読んでみてください。

目の錯覚はどうして起こるのか?錯視が生じる理由は「脳による視覚世界の大規模再解釈」だった
  1. de Groot and Gobet 1996; Gobet and Simon 1998.
  2. Kiesel, Kunde, Pohl, Berner, and Hoffmann 2009.
  3. 意識と脳――思考はいかにコード化されるか』(スタニスラス・ドゥアンヌ, 紀伊國屋書店, 2015, p.119)
  4. “直感の人”羽生善治が考える「直感」の定義とその磨き方 - ダ・ヴィンチニュース

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