『2020年って言うと、やけに近未来感あるよねー!』
『2019年と1年しか変わらないのにねー!』
僕は「最新テクノロジーを駆使して——」のような、いわゆる近未来チックな文句に弱いタイプの人間です。
そして僕は、何を隠そう、『西暦2020年』というSF小説顔負けの字面に、溢れんばかりの期待と希望を——同時に「脅威」を覚えているのですよ。
今回は、2020年に流行するであろう5つのテクノロジーを紹介しながら、「最新技術の危険性」について考えていきます。
2020年に流行するであろう5つのテクノロジー
5つの流行テクノロジー
- 人工知能(AI)
- パーソナライズ医療
- ブロックチェーン技術
- 自動運転(軽貨物輸送ドローン)
- 5G(第5世代移動通信システム)
僕はどちらかと言うと、最新のテクノロジー全般において「大きな希望」を持っているタイプの人間です。
そのため、ある一面だけを切り取って、「科学技術って危ないよなあ」と騒ぎ立てるのは本位ではありません。
でも、優れた機能を持つものほど「驚異性」や「危険性」は大きくなることも、また事実なんですよね。
技術革新が加速度的に進む今の時代だからこそ、明るい面だけでなく、暗い面にも目を向ける必要があるのかもしれません。
ガートナー、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表
人工知能(AI)
AIによって「死者との会話」が可能になる?
2019年12月31日に放送された「第70回NHK紅白歌合戦」では、『AI美空ひばり』が出場し、話題になりました。

「美空ひばり」の歌声をAIで再現し、3Dホログラムなどのデジタル技術で生前の姿を蘇らせる——。
これが可能だということは、そのうち死者との会話も可能になる、と考えても大げさではないのかもしれませんね。
ただ、そうなってしまうと、死生観や現実と仮想の区別といった倫理的な問題も出てくるでしょう。
もちろん、これらの技術の発展によって、2020年には「ディープフェイクの問題」が加速的に増加していくと予想されます。
ディープフェイクの問題
ディークフェイクとは、本来「機械学習アルゴリズムのディープラーニングを利用し、2つの写真や動画の一部を交換させる技術」とされていますが——。
現在では言葉の定義が広がっており、人が実際とは違うことをしたり言ったりしているように見せかける——といった、いわゆる「フェイク動画」や「偽動画」と呼ばれるものを指すようになっています。
要するに、Photoshopなどで作られたフェイク画像の「動画版」というイメージですね。
ディープフェイク・アーティストのハオ・リー(Hao Li)氏は、プーチン大統領の「ディープフェイク」を制作し、マサチューセッツ工科大学のカンファレンスで披露1しました。
This is the deepfake of @glichfield interviewing Vladimir Putin (wink wink nudge nudge). #EmTechMIT pic.twitter.com/PHoFV2iTPH
— MIT Technology Review (@techreview) September 18, 2019
彼によると、リアルで完璧なフェイク動画の実現までは6〜12ヶ月とのことで、さらに判別不可能なディープフェイクは数年で実現するだろう、との予測もしています。
もし、これらの技術によってフェイクニュースがエスカレートしていくと——?
いったい世界はどうなってしまうのでしょうか。ああ、ようこそディストピア。
パーソナライズ医療
あまり聞き慣れない言葉ですが、イメージとしては「一人ひとりに最適化された医療」という感じでしょうか。
2020年は健康面やヘルスケアといった分野のさらなる発展が予想されます。
ヘルスケアのアプリケーションやスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスと連携して、個人の健康面を管理——さらにデータを収集して解析することで——より最適化されたアドバイスが可能になっていくでしょう。
加えて、これからは「マイクロチップ」の技術によっても、医療はさらに一人ひとりに"パーソナライズ"されたものになっていくのではないでしょうか?
マイクロチップは日本人に受け入れられるのか?
https://www.bbntimes.com/en/technology/the-microchip-implant-takeover
スウェーデンやドイツ、アメリカの一部の地域では、体内へマイクロチップを埋め込む「マイクロチップ・インプラント」がすでに様々な分野で進んでいます2。
スウェーデンでは、約3,000〜4,000人が米粒ほどの大きさのNFC(Near Field Communication)マイクロチップを体内——主に手の甲——に埋め込み、家や車の鍵、クレジットカード、電車の切符の代わりとして利用しています。
実際、スウェーデンの国有鉄道会社SJは、2017年6月から体内マイクロチップを利用する「電車チケット予約システム」を導入しました。

アメリカのウィスコンシン州にあるソフトウェア会社「Three Square Market(32M)」では、2017年に従業員へのマイクロチップ埋め込みを推奨しました。
その結果、従業員196人のうち「92人」がマイクロチップを埋め込んだとのこと。
マイクロチップは、専用のスナック自動販売機での買い物やドアの開閉、パソコンのログインなどで利用できるようですよ。
また、FDA(アメリカ食品医薬品局)では2004年に医療目的での埋め込みチップを承認されていますが、感染の危険性やチップが体内を移動する可能性も懸念しているのも事実です。

日本でも2019年6月、ペット(犬や猫)に「所有者情報を記録したマイクロチップ」の装着を義務付けるなどの改正動物愛護法が可決、成立3しています。
あまりニュースになっていないことがちょっと不思議なんですが、こうして徐々にマイクロチップの導入が進んでいくのかもしれませんね。
そこに待っているのは、病気や怪我の心配もない理想郷か、それとも個人のプライバシーなど存在しない超管理社会か——。
ブロックチェーン技術
仮想通貨などで聞いたことのある方も多いと思いますが、2020年は「ブロックチェーン技術」がいよいよ本格的に導入され、Web3.0の世界がやってくるかもしれません。
https://developers.tam-bourine.co.jp/entry/2019/11/20/114310
「Web3.0(非中央集権Web)」については、【ALISの取説】5-2 Web3.0への招待にて、もずく様がとても分かりやすくまとめていらっしゃいます。
簡単に整理すると、
- Web2.0の問題点——個人のデータ(SNS投稿や購入履歴など)が一部の企業に収集・専有されてしまった
- Web3.0では——? 実世界の個人情報を他人に渡す必要がなくなる
もっと簡単に言うと、「ハンドルネームでも買い物できる時代がやってくる」といったところでしょうかね。
ブロックチェーンに関しては、以下の動画が分かりやすいです。

自動運転(軽貨物輸送ドローン)
まだまだ普段の生活に置いての実用化までは遠そうですが、それでも2020年は様々な場所で「自動運転の技術」を目にすることになっていくと思います。
すでに、羽田空港では自動運転バスの実証実験4が行われていますし、AmazonやUberでは「軽貨物輸送ドローン」の運用に向けて準備が進められています。
「ドローン配送」ついに商用化、Amazonが発表(西田宗千佳) - Engadget 日本版
Amazonの配達ドローン「Prime Air」は、「5ポンド(約2.3kg)以内の荷物を、30分以内に15マイル(約24km)以内の範囲で配達する」とされています。
すでに商用化の目処が立っており、Amazonワールドワイドコンシューマー部門の最高経営責任者を務めるJeff Wilke氏によると、「数ヶ月以内に商用サービスとして開始する」とのこと。

一方、Uberの配達ドローン「Uber Air」は、マクドナルドのハンバーガーを配達するテストを実施中5です。
ドローンが武器になる?
2019年9月には、サウジアラビアの石油施設をドローンで攻撃するという事件が発生6しています。
攻撃を受け炎上するサウジアラビアの石油施設。SNSに投稿された動画から(2019年9月14日)=ロイター
こうなってくると、
兵器——破壊活動やテロ攻撃のために——として使うドローンの部品を、配達ドローンが届ける
という間抜けな未来が待っているかもしれませんね。星新一の小説か何かなのかな?
5G(第5世代移動通信システム)
あらゆる分野のテクノロジーに応用ができる「5G(第5世代移動通信システム)」ですが、2020年は目に見えて大きい変化は実生活ではあまり感じられないかなあ、という印象です。
ただ、5Gによってハッキング(クラッキング)の脅威は深刻化することは十分予想できますし、IoT(モノのインターネット)やAR(拡張現実)の分野に関しても危険があることは間違いありません。
セキュリティブロガーのネットワークである「セキュリティ・ブールバード(Security Boulevard)」によると、『5Gの高速化は、デバイスを通してDDoS攻撃を受けやすくする可能性がある』とのこと7。
DDoS攻撃とは、簡単に言うと、標的のサーバーに大量の処理要求を送ってサービスを停止させてしまう攻撃のことです。
また、IoT(モノのインターネット化)で複数のデバイスや家電製品が接続されることで、仮にハッカーたちがネットワークの脆弱性を見つけた場合、被害の拡大が一気に広がる可能性もあります。
ARに関しても、ディープフェイクの問題と同様、現実のものと区別ができないレベルにまで達すると、街中で簡単にパニックが起こせてしまいますよね。
さすがに2020年にどうこうなる可能性は低いと思いますが、今年はオリンピックも控えていることですし、警戒しておくことに越したことはないでしょう。
まとめ
考えれば考えるほど、最新テクノロジーを使った"悪いこと"が出てきますが、これは裏を返せば、それだけテクノロジーが優れた機能を持っているということ。
どんな物でもそうだと思うんですけど、陰と陽と言うか、光と影と言うか、そういう一見対極に位置しているような概念でも、実はとても身近にあることがほとんどなんですよね。
どれだけ優れた機能を持つテクノロジーだとしても、目的を決めるのはあくまで人間側であって、テクノロジーを悪とするか、正義とするかも、結局は人間です。
科学技術がものすごい勢いで発展していく今の時代だからこそ、一人ひとりの人間が「テクノロジーとは何か?」「人間性とは何か?」「悪とは何か?」ということを考えていくことが大事なのかもしれません。
いわば、僕らはテクノロジーの急速な発展のために、一人ひとりが「哲学する時代」にやってきているのです。
そういった意味でも、近未来を舞台としたSF小説やアニメは、未来のシミュレーションを行う上でも興味深いものと言えるのではないでしょうか?
SF作品から未来をシミュレートする
おすすめは、小説だと『一九八四年』と『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、映画だと『ブレードランナー(原作:アンドロイドは電気羊の夢を見るか?)』ですね。
『ブレードランナー』はだいぶ原作と内容が違いますが、ひとつのストーリーとして綺麗にまとめっているので、時間のあるときにでも観てみてください。
アニメでは、『PSYCHO-PASS サイコパス』と『攻殻機動隊』がイチオシです。
どれもおすすめしたんですが、この中からあえて選ぶとしたら、
- 小説『一九八四年』
- アニメ『PSYCHO-PASS』
の2つですかね。特に『一九八四年』は教養としても読んでおきたい一冊。
2020年、少し未来の姿が想像できる今だからこそ、触れておきたい作品です。
アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』は、Amazonプライム・ビデオでは「3期のみ無料での視聴が可能(それ以外はレンタル)」で、dアニメストアでは「3期以外のエピソードが視聴可能」です(2020年1月時点)。
それぞれ、dアニメストアは31日間の、Amazonプライム・ビデオは30日間の無料トライアルが用意されているので、この機会に試してみてはいかがでしょうか?
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